皆さまいかがお過ごしでしょうか。
秋田高専のホームページにようこそ。
秋田高専の校長の高橋です。
秋田高専の教育体制の見直しについて報告したいと思います。
秋田高専では、10月から「一般科目」の重要性に着目して、学校の組織を見直しました。
秋田高専の授業科目は、「専門科目」と「一般科目」に分かれています。
「専門科目」は、秋田高専に設けられた4つの専門分野である、「機械」「電気・電子・情報」「物質・生物」「土木・建築」に対応した、それぞれの分野の専門知識を学ぶための科目です。「一般科目」は、学生が共通して学ぶこととされている英語や数学、国語、理科、社会、体育などです。
秋田高専では、今までは「一般科目」を担当する教員は「人文科学系」(英語等)と「自然科学系」(数学等)に分かれて組織されていました。「文系」と「理系」ということができるかもしれません。
この「系」という教員組織は、教育内容を検討するなど学校運営の基本となる重要な単位です。
しかし、「一般科目」の担当教員が「文系」「理系」に分けられて小さなグループに押し込められていたのでは、何を話し合うにしてもアイデアに限界があります。専門の殻に閉じこもっていては、発展はのぞめません。
また、そもそも秋田高専は技術者を養成するための学校です。そんな学校で、「文系」「理系」という枠組みが設けられていること自体が時代遅れではないでしょうか。
秋田高専では、「一般科目」の目標を、「人間の幸福」「工学基礎知識の習得」「コミュニケーション能力」としています。「専門科目」を学ぶことで専門的知識を身につけることが重要なのは当然ですが、技術者としての存在を支える社会とのつながり、技術の持つ社会的な意義を考えるということ、技術の倫理的な側面など、専門的な知識を活かしていくための足腰となる学びを「一般科目」を通じて行うことも、技術者にとっては欠かせないことです。
「一般科目」の内容は、「教養」と言い換えることができるかもしれませんが、教養なき技術者が社会で信頼を得ることができるでしょうか。むしろ、技術の暴走という大きなリスクを社会にもたらす結果になるのではないかとおそれます。
「一般科目」あっての「専門科目」であり、「専門科目」と対応して編成された「一般科目」の内容を身につけることなくしては、高専教育の目指す技術者としては不十分なのです。
このため、秋田高専では10月から、「一般科目」を担当する教員組織の「文系」「理系」の壁を取り払い、「共通教育系」として大きな枠組みを作って「一般科目」の教育内容を一層充実させていくこととしました。
「専門科目」を学ぶための基礎となるとともに、「一般科目」としての独自の意義を有する点を重視し、学生が共通して学ぶべき科目としての 「一般科目」の意義をもう一度とらえ直すと共に、名称も「共通教育系」とすることで、秋田高専の教育を充実させるためのエンジンとして位置づけ、秋田高専の教育全体の活性化を目指すことにしました。
技術者としての足腰を鍛えていくという「共通教育系」の考え方のもとで、学びは学校の中にとどまるものではありません。秋田の地元の皆さまや教育機関との連携を求めて、秋田高専の学生が学校を飛び出して活躍できる機会を作っていきます。海外での見聞を広めるための海外研修を教育課程に組み込んで推進していきます。
私は、高専は、技術者として生きる入口であると考えます。入口ですから、技術者としての勉強のスタートが高専での勉強であって、その勉強が高専で完結するというものではありません。高専での勉強を足場にして自己研鑽のできる人材こそ、本来のあり方であると思います。
就職するにせよ、起業の道を選ぶにせよ、また大学等に進学して研究を進めるにせよ、高専を卒業してからの勉強の道は高専での勉強以上に厳しい道です。その道を歩むための足腰を鍛え、心構えを身につけることが高専教育の目的です。
専門知識に強いだけではない、教養を身につけた魅力的な人間であること。世界のどこに出て行っても恥ずかしくない人間であること。社会とのつながりの中で技術を追求できる人間であること。「共通教育系」の発足を契機として、一層の教育の充実を進めていきたいと考えています。
さて、10月28日29日には、秋田高専の「高専祭」が開催されます。
「高専祭」は、学生が中心となって企画する行事で、その企画立案の過程自体に大きな教育効果が期待されます。
地域の皆さまにはお馴染みの恒例の「高専祭」ですが、今年度のテーマは「Acceleration!!」です。「加速」という意味です。
新型コロナウイルス感染症の影響で色々な制約がありましたが、今年度から「加速」していこうという学生諸君の意気込みが表れています。
学生が楽しい企画を用意して皆さまをお待ちしておりますので、ぜひ「高専祭」をのぞいてみてください。
また、高専祭に併せて、高専制度発足60周年を記念した植樹を計画しています。来年は秋田高専創立60周年です。創立60周年に向けて秋田高専は「加速」していきます。