皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 秋田高専のホームページにようこそ。
 秋田高専の校長の高橋です。

 「おあつうございます。」こういう夏の挨拶もどうかと思われるくらいの「夏だから暑いのは当たり前だ。」と言いたくなる昨今です。
この暑い中ですが、高専の教員はあるチャレンジに取り組んでいます。科研費=科学研究費補助金の申請書の作成です。
科研費とは、大学や高専の教員=研究者が、自らのアイデアで研究を行うための国からの助成金です。自分の研究のアイデアを申請書にまとめて申請して審査を受けなければなりません。研究者たる者、科研費を獲得して自分の研究を推し進めていくことになります。これは理系でも文系でも同じことです。秋田高専でも、社会科の教員がドイツ史をテーマとして科研費を獲得していて、彼は夏休みの期間を活用してドイツに行って史料収集等の活動を進めています。
 科研費を獲得するためには、大学の研究者と真正面から競争して審査を突破しなければなりません。クラス担任をはじめとした学生指導や部活動の顧問など、高専の教員は高等学校の教員と同じような教育面での仕事をこなしつつ、大学の研究者に負けない申請書をまとめて科研費の獲得に挑まなければなりません。


 大学であれば、研究室の大学院生といっしょになって研究を進めていくということもあります。まさに教育と研究を一体として行う大学の面目躍如たるところです。高専でも、4年生、5年生を各教員の研究室に配属しますが、そこは大学院生のようにはいきません。高専の研究室は、研究よりも教育に力点を置かざるを得ないのです。
大学と高専との比較をして高専の教員は大変だといっているのではありません。高専には高専の大学には大学の苦労があります。その苦労が、高専の場合はどうしても学生を指導する面での苦労になるということです。これは中学卒業後の学生を教育することを使命とした高専の宿命です。
ただ、科研費の獲得競争という観点からすれば、大学と高専との雰囲気の違いということを含め、高専教員にとっては言うほど簡単なことではありません。
ではなぜ高専教員が科研費に挑戦しなければいけないのでしょうか。なぜ科研費なのでしょうか。
 それは、科研費の申請と審査のプロセスにおける「ピアレビュー=同僚による評価」という考え方にあります。科研費を運営している日本学術振興会は、「科研費の審査は「建設的相互批判の精神」に則ったピアレビューであり、これは⽇本の学術研究の将来を左右する重要なプロセスです。」としています。


 科研費を申請するのは大学や高専の教員=研究者ですが、科研費の審査をするのも研究者です。研究者が同僚として提出された研究計画を評価する。そこには外部評価とは違った厳しさがあります。
 ピアレビューのプロセスに挑戦することが、研究者として自らを鍛え、レベルアップさせる道です。ピアレビューにかなうだけの研究計画を立てて申請書にまとめることができるようになることが、研究者としての存在証明ともなります。
 研究助成ということなら、チャンスは科研費に限られません。様々な財団等が高専を対象に研究助成の募集を行なっています。その中には秋田の地元の企業の関係するものもあって、特に秋田高専からの応募を期待して募集してくれているものすらあります。これらの研究助成は、高専の教員にとってなじみがあって使いやすく、地元に近い高専としてはぜひ活用してくべきものです。
 しかし、科研費には、単に研究助成ということにとどまらない挑戦する価値があるのだということ、その点は高専という研究に全精力を注ぎ込むことのできる環境ではない中にあっても、決して忘れることはできないのです。