今年度より2年間、タイ高専の1つであるKOSEN-KMITLに派遣されています。渡航して3ヶ月が経過しようとしていますが、今回はタイ高専および現地での活動について紹介します。
野澤正和(機械系 現・機構本部国際参事補)
1. KOSEN-KMITLはどんな学校?
KOSEN-KMITLは、タイの大学であるKMITL(King Mongkut’s Institute of Technology Ladkrabang: モンクット王工科大学ラカバン校)に、2019年度から設立された高専部門です。現在、メカトロニクス学科、コンピュータ学科、電気電子工学科の3学科があり、約490名の学生が在籍しています。
キャンパスは、バンコク郊外にあるスワンナプーム空港のすぐ北側に位置し、海外からのアクセスは比較的良好です(もっとも、実際には不便な点もありますが、これについてはまた別の機会にご紹介します)。昨年度末(2025年1月)に、専用の校舎(図1、2)が完成しました。
KOSEN-KMITLでは、日本の高専の教育システムを可能な限り忠実に導入しています。具体的には、5年一貫のくさび型教育、前期・後期の2セメスタ制、年4回の定期試験、実習重視の授業構成、クラス担任制(毎朝のショートホームルーム、ロングホームルーム→秋田高専での特別活動に相当)、保護者面談期間、卒業研究(Final Year Project)の発表会などが挙げられます。
一方で、日本の高専とも異なる部分もいくつかあります。
例えば
- 1クラスあたりの学生数は約20名(多くの学科・学年は2クラス構成)
- 授業では、学生はノートではなく、タブレットやノートパソコンを使用(ノートを持参している学生はほとんどいません)
- クラブ活動は主に文科系(専用の体育館やグラウンドが無いため)
- 卒業研究のテーマは、教員個々の研究テーマではなく、企業との連携によるPBL(課題解決型)の形式で与えられる
といった特徴があります。


2. 派遣教員は何をしているの?
派遣教員の業務内容は、派遣年度や学科によって多岐に渡ります。一般的には以下の業務を担います。
- カリキュラムの検討と設計、その実施状況の確認、検証
- 授業・実習資料の作成、提供、英語による授業の実施
- タイ人教員による学科運営を円滑に進めるための補助および助言
私の場合、今年度前期には以下の業務を担当しています。
- 授業担当科目 : Industrial mechanics, Machinery practice, Labwork5
- 実習工場(Workshop : 日本の高専の実習工場に相当)の立上げと安全衛生教育の整備
- 学務関連業務 : 自己評価委員を担当(KIS受審に向けたサポート)
- 担任業務 : メカトロニクス学科4年生(写真3)の担任を務め、タイ高専の学生の、日本企業への就職を視野に入れたキャリア教育の実施

※写真右下が野澤
3.秋田高専との関係は?
ご存じの方も多いと思いますが、秋田高専では近年、国際交流活動に力を入れています。コロナ禍以降は、シンガポール、タイ、フィンランド、フランス、メキシコ、台湾などを訪問し、海外経験を持つ学生数も年々増えてきています。
KOSEN-KMITLに対しても2024年3月に秋田高専からの訪問がありました。今年も10月には、KOSEN-KMITLの電気電子工学科3年生の1か月研修の受入れや、11月には秋田高専からの訪問が予定されています。今後も、両校間の交流がさらに深まっていくことが期待されます。また、タイ高専の学生は、日本語のスキルアップを目指しています。是非、英語と日本語を織り交ぜながら、タイ高専の学生と交流を目指してみて下さい。