野澤正和(機械系 現・機構本部国際参事補)

 

 皆さんこんにちは。最初の派遣だよりから間が空いてしまい、日本はそろそろ冬の足音が聞こえる時期かと思います。このたよりを書いている11月上旬は、タイでは乾季が始まる時期に差し掛かっていますが、まだ1日のどこかの時間帯には雨が降ります。一方で、日中は連日最高気温30℃を超えるものの、朝晩は少し涼しくなってきたかなと感じます。日本より低緯度に位置しているため、1年を通じて日の出・日没の時間がほとんど変わらないため、秋田での夏冬の極端な日中の時間差を体験していると、得したような損しているような、そんな気分になります。

 さて、本日はタイの交通手段について紹介します。各交通手段を紹介する前に、まずは派遣教員の通勤手段について触れておきます。現在、派遣教員全員がバンコク市中心部に住んでいますが、郊外のKOSEN-KMITLへは大まかに以下の4つの通勤手段になります。

  1. 乗り合いのバン : 乗り換えが無く、雨の影響も受けないので負担が少ない。一方で、コストは高く、バンコク市内の酷い通勤ラッシュを避けるため、出勤時間が早い。
  2. タイ国鉄(SRT)のみ利用 : 最もコストが良く、KOSEN-KMITLの最寄り駅まで片道5バーツ(2025年11月現在、約24円)で通勤可能。一方で列車には冷房は無く(扇風機はある)、始業時間までに学校に到着するためには、始発に乗る必要がある。
  3. エアポート・レール・リンク(ARL:空港と中心部を結ぶ鉄道)+タクシー : ARLは冷房完備の列車であり、通勤手段、快適さ、コストを考えると一番バランスが良い。一方で、乗り換えの必要があり、ARL最寄り駅であるラカバン駅からタクシーを使用する必要があるが、時間帯によってはタクシーを捕まえづらく、ドライバーによってはぼったくりやタイ語以外ではコミュニケーションが困難な場合もある。
  4. タクシーのみ利用 : 不測の事態があった場合の最終手段で、普段の通勤では選択しない。しかも、日本のタクシーでは考えられないが、行先によっては、渋滞が酷い、遠い、等の理由で連れて行ってくれないドライバーもいます。

 どの手段を用いても、通勤時間はだいたい1時間~1時間半程度を要します。また、タイの公共交通機関の運賃は、日本よりも安く(飛行機は除く)、比較的気軽に利用できます。

 次に、タイの公共交通機関について、それぞれの特徴を紹介します。

①鉄道

 バンコク市内の鉄道として、上述のSRT(State Railway of Thailand)、ARL(Airport Rail Link)の他に、MRT(Metropolitan Rapid Transit, 通称Blue Line)と呼ばれる地下鉄、BTS(Bangkok Mass Transit System, 通称Skytrain)と呼ばれる市内の高架鉄道があります。この中で最も特徴的な鉄道はSRTです。写真1にあるように、ホームは線路と同じ位置なので乗降が大変な上に、車両によっては扉がないものもあります。

写真1.SRT(タイ国鉄)の写真

(a)ホームと車両乗降口に大きな落差があります。
(b)写真だと分かりにくいですが、走行中でもドアは開けっ放しです。

加えて、日本で使用していた車両を客車として用いている場合もあり、実際に先日、男鹿線の旧車両(キハ40/48形)の客車も走っていたそうです。参考までに写真2にBTSの写真を載せておきます。

写真2.BTS Skytrainの写真

(a)ホームも車両も洗練されています。
(b)座席数は少ないですが、ポール・吊り革が多く設置さています。

②車

  1. タクシー : 上述した欠点はありますが、タイでは、Grab、Boltといった配車アプリが一般的になっているため、タクシー利用のハードルがだいぶ下がっています。なお、タクシードライバーに行先を「KOSEN-KMITL」や「KMITL」と言っても、ほとんどのドライバーに通じません。KMITLのキャンパスに行きたい場合は、「テクノラカバン(テクノー⤴ラカバンー⤴といった感じで、語尾を上げる発音がベター)」と伝えると連れて行ってくれます。
  2. 路線バス : 日本よりもだいぶ安い運賃で利用できますが、個人的には、行先が分かりにくく、タクシーよりも利用のハードルを感じます。バンコク市内のバスの運行状況を確認できるViaBusといったアプリもあるので、それらを利用すれば便利なのかもしれません。なお、路線バスには、エアコン無しで窓全開のバスと、エアコンの付きのバスが走っていますが、同じ区間でも料金が異なります。エアコン無しが8バーツ~、エアコン付きが12バーツ~で乗車可能です。一方で、窓全開バスはEVバスに切り替わっていくようなので、旧式のバスを体験したいのであれば今のうちかもしれません。
  3. トゥクトゥク : 観光客に人気の3輪の自動車です。メジャーな観光スポットや繁華街の入り口ですぐ見つけられます。運賃は距離や交渉次第で変わりますが、市内中心部だと100~200バーツで利用できれば御の字かなと思います。なお、名前はエンジン音に由来しますが、多くのドライバーはマフラーを改造しているので、トゥクトゥクというエンジン音は全く聞こえません。
  4. ソンテウ : 「2列」の意味の、トラックの荷台を改造した乗り合いタクシーのようなものです。KOSEN-KMITL付近ですと、8バーツ程度で利用できます。多くのタイ人が通勤・通学に利用しているようですが、本来荷台である部分に乗るので、当然シートベルト等の安全装備は無く、安全リスクのある乗り物です(トゥクトゥクも同等のリスクがありますが)。他にも同様の乗り合いの車で、「シーロー(「四輪」の意味)」と呼ばれるものもあります。
  5. バイクタクシー : バイクのタンデムで運んでもらう移動手段です。バンコク市内は慢性的な渋滞のため、渋滞の車の間をすり抜けられるバイクは機動力があり、急いでいる人には重宝されています。バイクタクシーも、Grab、Boltの配車アプリで呼ぶことができます。一方で、当然ながら万が一の事故の際の大怪我のリスクが大きいです。そのため、派遣教員は、バイクタクシーは利用しないようにとのお達しがきています。

③自転車

 バンコク市内の一部エリアおよびKMITLの構内では、レンタサイクルが整備されており、少しの遠出に便利です。レンタサイクルも他の交通手段と同様、アプリで手軽に利用できます。写真3に示す緑のレンタサイクルは、anywheelというサービスで、アプリによるQRコードのスキャンで気軽に利用できます。標準タイプの自転車の利用料金は30分10バーツですが、最近電動アシストタイプの自転車も導入され、こちらは利用料金が少し割高になっています。

写真3.レンタサイクル「anywheel」

④船(水上バス)

 バンコク市内は、チャオプラヤ川とそこに接続するセンセーブ運河を利用した船での移動も、主要な交通手段の一つとなっており、特に写真4に示す運河を運行する船は、観光客はもちろん、市民の通勤手段・日常の移動手段として利用されています。運賃は距離にも依りますが、だいたい十数バーツ程度です。運行便数も多く、船の側面には透明の覆いがあるので、水がかかる心配もほとんどありません。ただし、次の船着き場の案内は無く、船着き場の看板も乗船位置によっては確認しづらいので、慣れるまではGPS機能等を用いて自分の現在位置を把握しておく必要があります。それと、水質は悪いので、水しぶきがかかっただけでも、すごくへこみます。

写真4.センセーブ運河の水上バス

(a)手前の船着き場(pier)から乗り込みます。
(b)船内は天井・両側とも覆いがあります。

 以上が主な交通手段になります。特にバンコク市内では、これらの車両がひしめき合うことで慢性的な渋滞が生じています。加えて、激しい雨が降ると、短時間で冠水してしまう道路も数多くあり、市内の道路状況は混沌としています(歩道も段差やボコボコのタイルが多く歩きづらいです)。一方で、こちらのドライバーのほとんどが、いわゆる「かもしれない運転」を徹底しており、日本では交通トラブルの元になる、急な飛び出しや割り込みにも寛容さを感じます。