野澤正和(機械系 現・機構本部国際参事補)

 サワディーカップ。2025年も残りわずかとなってきました。秋田は最高気温が10℃に達しない日も出てきており、冬に突入した時期かと思います。バンコクでも最近は、朝晩は涼しく、日によっては少し肌寒く感じるようになってきました。日中の最高気温は30℃くらいまでは上がりますが、朝晩は20℃を下回る日もあります。秋田県民の感覚ですと、このような気温では、初夏または秋と感じる人が多いと思いますが、タイ人の感覚では、もちろん個人差はありますが、季節はもう冬のようです。

 さて、今回はKOSEN-KMITLの学校行事について、いくつか紹介します。日本の高専にも同様のイベントがあり、学生・教職員一丸で盛り上げていますが、タイ高専でも同様に、学生・教職員全員が楽しめるイベントになっています。

①Industrial Forum

 秋田高専での企業との個別懇談会に相当するイベントです。今年は6月20日にKOSEN-KMITLの校舎で開催されました。主な内容として、企業紹介のブース展示、タイの日系企業の方による講演会およびパネルディスカッション、学生による学修成果(PBL、卒業研究)の発表会で構成されています。全学年学科の学生が参加し、52社の企業に参加頂きました。参加企業は、タイに工場や事業所のある日本企業が多いですが、各企業から参加される社員は、タイ人スタッフ、日本人駐在スタッフ、OB・OGとバラエティに富み、5年生は就職活動、4年生はインターンシップ、3年生以下は企業研究のため、積極的にブースを訪問していました。

 タイでは、KOSENの産業界からの認知度は日本ほど高くありません。そこで、学生に企業を知ってもらうと同時に、企業の方にもタイ高専の学生がどのようなことを学んできていて、どんなことができるかを知ってもらう必要があります。そのため、写真に示すようなShow caseと呼ばれる、学生の成果発表の機会を設けて、学生の能力やポテンシャルを企業にアピールする場も設けています(写真2)。なお、タイ高専の学生の多くは、人前でプレゼンをすることが大好きです。

写真1.Industrial Forumの開会式
写真2.Show caseの様子

②Open House

オープンキャンパスに相当するイベントで、今年は8月2日に開催されました。各学科・教科・部局毎にアクティビティや展示用のブースを準備して、主に中学生とその保護者に向けてPRを行います。同時にクラブによる展示や茶道・華道の展示ブースもあり、雰囲気としては、高専祭と同時開催される進学ガイダンスに近いかもしれません。今年のテーマは「ジャングル」で、ジャングル探検のコスチュームや動物に扮した衣装で参加する学生・教職員も多数いました。各ブースでは、教職員よりも学生が中心となって、来場者への説明やアクティビティのサポートを行っていました。

ここでは、私が担当したWorkshop(実習工場)での活動について紹介します。Workshopでは、設置されている工作機械や実習で用いる工具の説明をメカトロニクス学科の5年生が説明しました(写真3)。そして、メインイベントとして、レーザー加工機および水圧フォールディングマシンの実演を行い、実演で加工した部品を、来場者に組み立ててもらい、KOSEN-KMITLの校舎の形を模したペン立て(写真4)を完成させるという内容でした。

写真3.Workshopでの展示の様子
写真4.Workshopでの実演で製作したペン立て

③Sports Day

 スポーツ大会に相当するイベントです。秋田高専のスポーツ大会は、クラス対抗で2日間の日程で実施しています。一方でこちらのSports Dayは、全学生・全教職員を4チームに分けてのチーム対抗戦になります。日本の高専の部活動に相当するものがほぼ無いため、競技には経験者もエントリー可能になっています。学事日程上のSports Dayは1日(今年度は8月29日)ですが、この日は各チームからのパフォーマンス(ダンスや寸劇)の披露(写真5)と、結果発表・表彰が主となる最終日の位置づけで、実際の各競技は、それ以前の3週間に渡って実施されています。KOSEN-KMITLには、スポーツの専用の施設・設備はほとんど所持しておらず、KMITLの大学の設備を利用して競技が行われます。また、ほぼ全クラスが16時10分まで授業がある一方、ほとんどの学生がKMITLの寮に住んでいるので、放課後に競技を進行することになっています。秋田高専のスポーツ大会は、学生・教職員とも同一のトーナメントで競技を行いますが、こちらでは学生と教職員は分けて競技を実施しています。私も教職員のバドミントン競技に参加してきました。

写真5.Sports Day最終日の様子
写真6.保護者有志によるStreet foodsの様子

 これらのイベントを開催する上で、保護者によるサポートが非常に手厚いです。秋田高専でも後援会によるご支援によって、多くの行事を実施できています。同様に、タイ高専でのこれらの行事でも、保護者によるサポートが、イベントのにぎわいに一役買っています。イベント毎にスナックボックス(タイ高専へ研修に参加した学生さんは分かると思いますが、飲み物と菓子パンやケーキが同梱されたものです)が毎回提供され、さらにSports Dayでは、写真6の様に、保護者の有志の方が屋台(Street foods)を設置して、食べ物・飲み物の提供が無料で行われており、日本の高専では普段あまり直接目にすることができない保護者のサポートを実感することができます。