皆さまいかがお過ごしでしょうか。
秋田高専のホームページにようこそ。
秋田高専の校長の高橋です。
今年は秋田市内もだいぶ雪が降りました。
豪雪に見舞われた地方の皆様は、ニュースでの情報やインターネットにアップされた方々のお話を読む限りでも、大変な難儀であったことと拝察いたしております。
心よりお見舞いを申し上げます。
さて、高専の入試も進んでまいりまして、秋田高専では秋田県内の受験生を対象とした「後期特別選抜B日程」を残すのみとなっております。
秋田高専では、「入試=落とすための試験」という考え方はとっていません。秋田高専での学生生活をやり遂げる熱意ある受験生を一人でも多く迎え入れたいという考え方に立ち、受験機会を増やしたり、全国の高専を目指す希望者に情報を届けられるようにインターネットを活用した広報活動に力を入れたりしてきました。
今年度からは、推薦入試で面接を重視することとしました。面接の配点を多くするとともに、面接時間も十分にとって受験生と面接担当の本校教員とが、高専生活への期待や将来の希望について意見交換ができるように、そこで受験生のやる気や本校への適性を判断できるように工夫をしたつもりです。
面接を重視する入試のやり方がどういう結果につながるのか、それは合格者が実際に入学してからの頑張りしだいとなりますが、まず今年度やってみて手応えを感じているところです。
さて、年度も押し詰まってまいりましたので、来年度以降に秋田高専として挑戦してみたいと考えている構想について、この際ご紹介いたしたく存じます。
秋田高専として教育活動を進める上で考えなければならないことは、国立の学校ですから国全体の教育の方針ということもあります。技術者を社会に送り出すことを使命としておりますから産業界の求める技術者としての能力についても考えなければいけません。そしてなによりも学生諸君の希望、また保護者の皆様の期待は最も大事なポイントとなります。
さまざまございますが、やはり秋田にある高専として、秋田が置かれている状況や課題、県として向かっている方向といったところを抜きにすることはできません。
秋田県が風力発電のメッカとなりつつあることはご存知の通りです。秋田高専は風力発電を中心とした教育プログラムの研究開発を行うパイロット校として、函館高専、八戸高専とともに、関係の行政機関や産業界の皆さまと一緒になって取り組んできました。
風力発電は、再生可能エネルギーを生み出す有望な環境技術です。特に日本は島国で広い海域を有していますから、洋上風力発電を効果的に活用することができれば、我が国の積年の課題であるエネルギー自給の面で大きなチャンスとなります。
また、秋田にはリサイクル技術に優れた企業グループとしてDOWA(https://hd.dowa.co.jp/ja/index.html)が立地しています。小坂の鉱山から発祥した同社ですが、現在は様々なリサイクル技術を中心として業界を牽引しています。
限りある資源を活用することは、資源の面での条件が厳しい我が国にとって重大であるばかりか、世界的な環境問題の観点からも避けて通れない課題です。リサイクルに関係する技術も重要な環境技術です。
秋田高専では、DOWAと東北大学と秋田高専で連携した人材育成プロジェクトを進めています。秋田高専の学生に実際にリサイクル技術を体験する機会を与えるとともに、より勉強を進めるために東北大学の研究室での体験学習を設定し、将来の先端的な技術開発のための人材育成につなげていくプロジェクトです。
このように、秋田には環境技術=GXの基盤があり、秋田の大きなチャンスとなっています。秋田高専としては地の利を活かしてGXに積極的に取り組み、学生がどんな分野に進んでも、GXの切り口でチャンスをつかめるように育てていきたいと考えております。
また、地元の経済界の方々から、特に本校も参加している「秋田の未来を創る協議会」(https://r.goope.jp/akita-mirai-kgk/)では、デジタル関係の技術=DXの素養をもった技術者を求める声が上がっています。DXと英語力・国際経験をもった技術者を送り出してほしいという具体的な要請が取りまとめられています。
秋田高専は全教員60名ほどの組織です。あれもこれもというのは無理です。狙いを絞って進めることが必要でしょう。そこで、秋田高専の目指すべきは、環境技術=GX、情報技術=DX、そして英語力・国際経験を身につけた学生を送り出すことを目標にしたいと考えています。
もちろん、中学を卒業してから5年間を基本とする高専教育ですから、人間性を磨き、学生が人間的に一人前になるように育てていくことが第一です。毎日欠かさず登校して授業を受け自分で勉強を進める粘り強さ、仲間と力を合わせてプロジェクトの完成を目指すチームワーク、技術を扱う人間として心得るべき正義感や責任感、いわば人間性こそが優れた技術者の基礎となります。
その上で、現在の秋田であり、日本であり、世界が直面している課題であるとともに、大きなチャンスとなっているGX、DX、国際性を身につけていく。
秋田高専が、そんな教育ができる学校となることができればと考えております。
英語力については、秋田高専では努力の蓄積があり、4年生のTOEICスコアの平均が約500点にこぎつけるまでの成果が上がっています。
学生の国際経験の面では、秋田高専は、「在学中に1度は海外を経験しよう」という目標を掲げています。新型コロナウイルスの問題が終息して以降、シンガポールへの語学研修、タイに設置されたKOSENへの交流研修、「グローカル人材育成会」(https://akita-nct.coop-edu.jp/nitac-ghrd)会員企業のご協力を得ての海外工場見学と、学生を海外に送り出す機会の充実を進めてきました。
特にタイのKOSENとの関係では、秋田高専から客員教員を派遣して関係を深めており、本校に留学生が派遣されるようになりました。また、1ヶ月の短期研修として、今年度は10名の学生が本校に派遣され、来年度は20名の学生が本校で研修をすることになっています。
英語力にしても、国際交流にしても、たゆまぬ努力で水準を維持し、諸外国の関係機関との関係を作っていくことが必要です。今までの蓄積と成果を足場として、来年度以降も学校をあげて関係の皆様のご理解とご協力のもとで進めていきたいと考えています。
GXとDXはどうでしょうか。今までのやり方の延長線上でよいのでしょうか。
GXについて曲がりなりにもいろいろ手を出して試みてきてはいますが、DXについては、秋田高専はかなりのテコ入れをしないといけない現状にあると認識しています。
秋田高専の教育の柱としてDXを掲げるためには、現在の本校の教育全体のあり方を考え直して整理し、必要な力を外部から取り入れつつ、本校の教育力をGXのみならずDXの方向にも結集していく手立てが必要です。
秋田高専の教育全体を、GXとDXを柱とし、今まで進めてきた国際性を加味して再編成していくためには、どのような切り口が考えられるのか。
風力発電の教育プログラムに取り組む中で多くのヒントを得ることができました。
風力発電は、いくつもの技術が組み合わされた複合的で総合的な技術集積で成り立つものです。特定の技術の専門家であっては風力発電全体を見渡すことはできません。さらには、経営の観点や環境アセスメントを始めとした地元の関係者との関係など、とても高専だけではカバーできない広がりを持っています。
むやみに発散してしまって表面的な理解にとどまってしまってはいけませんが、高専の段階で特定の技術の専門性に偏重して勉強してしまうことは、風力発電に携わる人材として不適当なだけでなく学生の将来を狭めてしまうことになりかねません。
専門別に分類整理されたカリキュラムをこなしていく、いうなればインプット型の教育手法から、卒業後の社会での活動をイメージして必要な能力を割り出し、その能力を身につけるためのカリキュラムを学生の主体性を基軸として組んでいく。いわば出口思考で教育を考えていく挑戦に取り組む必要があるのではないかと気づかされました。
そもそも現在の進歩と変化の急な技術の世界ですから、専門性を積み上げていったのでは高専5年間でいくら詰め込んでも時間が足りない。ならば思い切って出口から、輩出するべき人材の姿から教育内容を精査し精選していく。さらに、学生が自らの技術者としての将来像から勉強の内容を自分で組み立てていく。
教育内容を見直すとともに、高専の教員のあり方も視点を変えていくことが必要です。各教員が自分の専門性を自らの存在証明とするのではなく、どんな教育ができるのか=どんな能力を育成することができるのか、そしてそれが社会にとってどんな役割を果たしうるのかを自ら明らかにして社会に問うていく。そのような方向性と目的意識をもった教員集団に再編成していくべきでしょう。そのために、工学の分野をおおよそ網羅している本校の4つのコースのそれぞれにGXとDXの専攻を設け、そこに教員を配置する案が考えられます。
ここにおいて学校全体の目指すべき教育の目標と教員個々の力を合一し、教育組織としての力を最大化することができます。なによりも社会に対して、秋田高専の教育内容をわかりやすく目に見える形で打ち出すことができます。秋田高専の存在意義を、ただ高専であるからと説明するのではなく、どんな教育をやり、どんな人材を育てるのか、から社会に対して説明していく。
この目的に沿って教育組織の再編成を来年度から具体的に高専機構本部や文部科学省と検討して整理をつけ、令和10年度からは、GXとDX、国際性の秋田高専として面目を一新する計画です。
教える内容と教える側の枠組みはできたとして、学生の学ぶ姿勢をより主体的な「学び取る姿勢」に転換させていくための工夫も必要です。
自らの卒業後の姿を考えて自分で学び取っていく。たしかに1年生、2年生の段階は基礎を固める必要がありますから、ある程度は集団的に型にはまった形で訓練を施し、地力を養うことが必要でしょう。しかし、3年生ともなれば高専の学生たるもの自ら学び取る姿勢で勉強に取り組まなければいけません。
そのためには、学校全体の教育課程に流れをつけていくことが必要です。基盤となる地力を身につける段階から進んで基礎となる知識・技能を身につけ、更に進んで応用と実地での実習へと進む。必修から選択と自主的研究へと発展させていく。授業の選択を広く設定するとともに、学年制の枠を取り払って単位制を徹底していくことが必要です。
皆が足並みを揃える必要はない。それぞれのペースで5年間を完走することが目的であるべきです。
そもそも、これは高専教育が本来持っていた美質なのではないでしょうか。高専60年の歴史の中で少々複雑になりすぎたのではないか、硬直化していないか。学生の気質も変化しています。学生が生き生きとして目的意識をもって勉強できているのか。学生が待ちの姿勢で必修科目の単位を淡々と取っていく、受身の姿勢で先生に急き立てながらいやいや勉強する、そんなことでは高専教育の妙味は発揮できません。
また、高専教育の特徴として5年生が取り組む卒業研究がありますが、これも5年生だけでやるのはもったいない。2年生の段階で課題を探して、3年生、4年生、5年生と、じっくりとテーマを追求していく。実は、このアイデアは八戸高専がすでに取り組んでいる自主探究活動にヒントを得たものなのですが、秋田高専では今年度から「風力ゼミ」として試行しています。
専門性の縦軸と一般性の横軸をもち、奥行きのある立体的な能力を持つ技術者の姿が理想の姿として考えられます。そんな技術者こそが社会をリードしていけるのではないか。秋田高専では「リーディングエンジニア」と呼ぶことにしています。
秋田高専でこんなことができるのか。
秋田高専だけの力では無理です。関係の方々からの一層のご支援とご指導をいただかないといけません。
ただ、私はこの点では、地元秋田の関係の方々や、グローカル人材育成会を始めとした産業界の皆様からいただいてきたお力を、大変心強く感じております。
秋田高専の教育を、卒業生が社会で活躍するための出口志向の教育としていくために、今までは必ずしも強くなかったDXの分野を充実させていくために、学生に広く世界を体験させるために、本校を取り囲んでいただける輪をできるだけ大きく厚くしていく努力をしてまいります。
どうか秋田高専の挑戦にお付き合い願いたく、お願い申し上げます。

